高配当株の最適な銘柄数 ― 私の見解は「50銘柄」
配当目的で積み立てている高配当株を、32銘柄から50銘柄に増やすことにした。なぜ30でも100でもなく50なのか。分散の研究と、日本株の減配の実態を読み比べてたどり着いた、私なりの結論。
私は毎月、日本の高配当株を積み立てている。今は32銘柄に5,000円ずつ。この秋、この数を50銘柄に増やすと決めた。安定枠35銘柄+成長枠15銘柄、1銘柄あたり月3,200円。投資する金額は今と同じ月16万円のままだ。
■ 高配当株は「放置」ではなく「点検」が要る
オルカンのような全世界インデックスなら、買って放っておけばいい。だが高配当の個別株は違う。会社が業績を落とせば、配当は減る。だから私は、持っている銘柄を毎月1回、配当の目線で「安心/注意/要再考」の3段階で点検している(/check)。一覧にすると、信号のように一目で状態が分かる。
この仕組みができたことで、前提が一つ変わった。点検の手間は、30銘柄でも50銘柄でも100銘柄でも同じになった。「管理しきれないから銘柄を絞る」という理由が、私には無くなったのだ。
■ 銘柄を増やしてもコストは増えない
もう一つの前提は、楽天証券の「かぶピタッ」(金額指定)と「かぶミニ」(1株単位)だ。かぶピタッのコストは買付金額の0.22%で、銘柄ごとの固定の手数料は無い。月16万円を32銘柄に分けても、50銘柄に分けても、払うコストは月約352円で変わらない。銘柄数を増やしても、1銘柄あたりの金額が小さくなるだけだ。
手間もコストも銘柄数に関係ないなら、残る問いは一つ。「分散の効果は、何銘柄まで意味があるのか」。
■ 分散の効果は何銘柄で頭打ちになるか
古典的な研究では「10銘柄前後で分散の大半が得られる」と言われてきた。その後、Statman(1987年)は、十分に分散するには少なくとも30〜40銘柄が要ると示した。日本株を含む5か国を調べた Alexeev & Tapon の研究では、日本株で分散できるリスクの9割を取り除くのに、値動きのブレの基準で約39銘柄、まれに起きる大きな下落(テールリスク)の基準で約50銘柄が要るという結果だった。
私が持つのは配当のためだ。怖いのは毎日の値動きではなく、めったに起きない大きな打撃のほう。だから私は、テールリスクの基準の「50」を採った。
■ 1社の減配が、配当全体をどれだけ減らすか
配当で考えると、銘柄数の意味はもっとはっきりする。全銘柄に同じ金額を入れているとして、1社が無配になったときに配当全体が減る割合は、こうなる。
10銘柄:10%
20銘柄:5%
32銘柄(今):約3.1%
50銘柄:2%
100銘柄:1%
32から50に増やすと、1社の事故の打撃は3.1%から2%に下がる。50から100に倍増しても、下がるのはあと1ポイントだけだ。
■ では、なぜ100銘柄ではないのか
理由は二つある。
一つ目は、質の高い候補には限りがあること。高配当株は、利回りだけで探せば日本に何百社もある。だが「配当を大事にする方針がある」「減配の歴史がない」「配当を払い続ける体力がある」まで求めると、候補は一気に少なくなる。100銘柄にしようとすると、条件の甘い銘柄を入れざるを得ない。分散のために質を落とすのは、本末転倒だ。
二つ目は、危機のときの減配は、銘柄数では消せないこと。コロナ禍の2021年3月期、日経平均に採用されている3月決算の187社のうち、56社(約3割)が減配を予想していた(大和総研の調べ)。危機は一斉に来る。これを防ぐのは銘柄数ではなく、業種の分け方と、一社一社の配当の体力だ。
だから私は、銘柄数は50で止めて、そこから先は「質」と「業種」で守ることにした。
■ 安定枠と成長枠の分け方
50銘柄は、二つの枠に分ける。
安定枠は、成熟していて体力があり、これから大きく衰えも伸びもしない会社。事業が安定していて、配当を安定して出し続ける。NTT、花王、日清食品のような会社だ。
成長枠は、事業がまだ伸びている途中で、利益と配当がこれから大きく増えていく会社。今の利回りはそこそこでも、10年後には取得した値段に対する利回りが大きく育つ。いわば「金の卵を産むガチョウ」。ERIホールディングスはこのつもりで買った。
大事なのは、今の配当利回りの高い低いで分けないこと。今は日本株が全体に高く、株価が上がって利回りが一時的に下がっているだけの優良企業も多い。見るのは「会社が配当を大事にする方針か」と「配当を払い続ける体力があるか」の二つだけだ。
■ 安定70%:成長30%にした理由
安定枠の利回りを4%・増配率を年2%、成長枠の利回りを2%・増配率を年8%と仮定して試算すると、20年間に受け取る配当の合計は、安定100%でも安定70%:成長30%でもほとんど変わらなかった。それでいて、20年後の年間の配当は70:30のほうが約2割厚くなる。最初の20年の受け取りをほとんど減らさずに、その先を太くできる。成長が期待外れでも、主力の安定枠70%が受け止めてくれる。
もちろん、これは仮定を置いた試算で、将来を約束するものではない。それでも「安定が主力、成長は少し」という私の感覚と、数字が一致した。
■ 守るルール
・1業種は15%まで(50銘柄なら7銘柄まで)
・1銘柄は3%まで
・海運・鉄鋼・資源・自動車など景気に左右されやすい業種は、合計20%まで
・銀行・保険・リースなどの金融は、合計20%まで
金融は今回8銘柄(16%)と厚めにした。日本はこれから金利が上がっていく局面で、銀行や保険の配当は増えやすい側にいると見ているからだ。ただし、8銘柄が「金利上昇」という同じ見立てに乗っているのも事実なので、合計20%を上限にし、銀行は3メガのうち2行にとどめた。
■ 私が新しく加える21銘柄
今の32銘柄のうち、配当利回りが1%前後の2銘柄(日本酸素HD・味の素)は外す。配当を受け取るためのつみたてで、利回り1%前後では配当の柱にならないからだ。精密機器のテルモも、10月に大きな損失を出し利回りも低いので外し、同じ精密機器のシチズン時計に入れ替えた(2026年10月12日。理由は「50銘柄にした理由」の追記に書いた)。さらに2026年10月18日、関西電力を妻(配子)と交換して売り、代わりにアステラス製薬を加えた(理由は同じ記事の追記)。残る29銘柄に、次の21銘柄を加えて50銘柄にする。
安定枠(12):三井住友FG、全国保証、東京センチュリー、オリックス、伊藤忠商事、三菱商事、日本たばこ産業、関西電力(10月18日にアステラス製薬と交換)、大阪ガス、山九、リンナイ、サンドラッグ
成長枠(9):塩野義製薬、ハマキョウレックス、三浦工業、大林組、エクシオグループ、双日、日本特殊陶業、加賀電子、シチズン時計
どれも、過去10年の配当の推移と、最新の決算短信の配当予想・配当性向・自己資本比率を確かめた。電力(関西電力)とたばこ(JT)は、景気に左右されにくい配当の柱として入れた。最後まで候補に残っていた会社を一つ、自己資本比率が私の基準(40%)に届かず、今期の大幅な減益予想も出ていたので外した。名前が知られていても、基準に合わなければ入れない。
■ この結論を見直すとき
・楽天証券のコストが、銘柄ごとの固定の手数料に変わったとき(銘柄が多いほど不利になる)
・基準を満たす質の高い候補が、50社に届かなくなったとき
・成長枠の会社が、何年たっても利益と配当を伸ばせなかったとき
それまでは、50銘柄を毎月の信号で見守りながら、黙々と積み立てていく。高配当株は、銘柄を当てるゲームではない。減らない配当を、数でならし、質で守り、時間で育てる。それが、私の高配当の結論だ。