保有銘柄の月次点検(配当目線)

【2026年10月点検】NTT(9432)はホールドで大丈夫?配当目線で累進配当・借入・ドコモの問題をチェック

点検日 2026/10/12(月)   情報・通信業   株人(かぶと)
株人株人
今月の点検、今日はNTTだ。ドコモ、NTT東西の固定回線、NTTデータの海外のデータセンターやITサービスまで抱える、日本最大の通信グループだ。私の高配当つみたて50銘柄のひとつだ。見るのはいつもどおり「この配当、これからも続くのか」だけだ。
ベアベア
株人さん、9月にドコモが約34万回線分の情報を、同意なくAmazonに渡していたって発表したよ! それに格付けも5月に下げられてるし……。
ブルブル
でも配当は5.3円から5.4円に増やす予想で、決まれば16期連続の増配だぜ! 減らさない「累進配当」も約束してる。
ベアベア
でも借金が17兆円もあるんでしょ? 利上げで利息が増えたら……。
株人株人
今月は悪い話がいくつも重なっている。一つずつ「配当に響くかどうか」に引き直して見ていこう。結論は先に書いておく。
判定:〇 ホールドで大丈夫 2026年10月の点検
  • 今期の配当予想は年5.4円(前期5.3円から+0.1円)。累進配当(原則として減配しない)を掲げ、決まれば16期連続の増配。配当性向は約45%
  • 第1四半期は売上+10.9%・純利益+5.8%で、通期予想(純利益9,800億円)の約28%。ドコモの情報の扱いの問題は、配当を脅かす規模の損失にはなっていない
  • 気になるのは財務だ。有利子負債は約17.4兆円、自己資本比率は約21%に下がり、S&Pは格付けをBBB+に下げた。前期のフリーキャッシュフローは配当とほぼ同じ額で、余裕は小さい
保有株数
28株
取得単価
178円
年間配当(予想)
151円
取得単価に対する利回り
3.03%
参考:評価額 4,987円・含み損益 +3円(判定には使っていません)。保有データは /dividend と同じで、毎営業日自動で更新されます。

ここからは、点検した7つの項目を順番に書いていく。全部「配当が続くか・増えるか・減るか」の目線だ。

1. 今の会社の状況 ― 配当の原資は稼げているか

項目2024年3月期2025年3月期2026年3月期今期予想
営業収益13兆3,745億円13兆7,047億円14兆4,091億円15兆600億円
営業利益1兆9,229億円1兆6,495億円1兆7,062億円1兆7,100億円
純利益1兆2,795億円約1兆円1兆370億円9,800億円
営業キャッシュフロー2兆3,741億円2兆3,640億円1兆4,851億円—

売上は伸びているが、純利益は2024年3月期の1兆2,795億円から1兆円前後に下がり、今期は9,800億円(−5.5%)の予想だ。ドコモの販売促進の費用などがかさんでいる。

事業の柱は、ドコモの携帯・固定通信、NTTデータの海外データセンターとITサービス、NTT東西の地域の回線だ。第1四半期は、国内通信の売上+8.5%に対して利益は+2.7%と伸び悩んだが、海外のITサービスが売上+15.8%・利益+9.9%と伸びて補った。

ブルブル
国内の通信が伸び悩んでも、海外のデータセンターが稼ぐってわけだな!

2. 直近1か月のニュース ― 配当に響く悪材料は?

今月は悪材料が1つある。9月16日、ドコモは、Amazon の会員費が割り引かれる料金プランをオンラインで申し込んだ利用者の一部について、約34万回線分の電話番号と料金プラン名を、同意を取らないまま Amazon に渡していたと発表した。2026年4月21日から8月20日までの申し込みが対象で、同意の確認文を設定のミスで表示していなかったことが原因だ。氏名や住所、カード情報は含まれず、Amazon は情報を使わずに9月12日までに削除したという。

配当の目線では、この件で出る費用は、純利益1兆円規模の会社にとって大きくない。心配なのは信頼の低下で、ほかの携帯会社への乗り換えが増えれば、ドコモの稼ぎがじわじわ削られる。

配当にとっての好材料は自社株買いだ。5月8日に上限2,000億円(2027年3月末まで)の取得を決め、9月末までに約776億円を買った。株数が減れば、1株あたりの配当を増やしやすくなる。

ベアベア
通信会社が情報の扱いでミスをするのは、やっぱり信頼に響くよね……。
株人株人
会社としては深刻なミスだ。ただ、配当を減らすほどの損失にはならない。見るべきは、この先ドコモの解約が増えていないかだ。決算で契約数の動きを確かめる。

3. 金利の影響 ― 借入が大きい会社には逆風

NTTは、ドコモの完全子会社化、NTTデータを通じた海外の買収、データセンターや次世代の通信基盤への投資で借入が増え、有利子負債は約17.4兆円に達した。ドコモが住信SBIネット銀行を子会社にしたことで、銀行の預金なども負債に加わっている。S&Pは2026年5月、財務の回復の遅れを理由に格付けをBBB+に下げた。

日銀の利上げは、借入の利息を増やす方向に働く。ただ、借入の多くは長い期間の固定金利で、すべてがすぐに高い金利に置き換わるわけではない。利息の増加は数年かけて少しずつ利益を削る形になる。今の配当がすぐに払えなくなることはないが、増配のペースが鈍る要因にはなりうる。

4. 為替の影響 ― 円高は海外の利益を目減りさせる

NTTデータの海外事業が大きくなったので、円安は利益を押し上げ、円高は押し下げる。それでも、累進配当を掲げているので、為替で1年の利益が目減りしただけで配当を下げることは考えにくい。

5. 地政学の影響 ― 海底ケーブルとデータセンター

世界をつなぐ海底ケーブルは、事故や意図的な破壊にさらされている。海外のデータセンターは、2026年6月末の約1,630MWから2027年3月末に約2,040MWへと急いで増やしている最中だ。米中の対立で半導体などの機材が手に入りにくくなれば、建設が遅れ、予定外の費用がかかるおそれがある。国内に安定した通信の収入があるので、全社が傾くリスクではないが、手元に残る現金を減らす要因になる。

6. 決算見通し ― 第1四半期は計画を少し上回る

項目今期(2027年3月期)の会社予想第1四半期の実績(4〜6月)進捗率
営業収益15兆600億円3兆6,177億円(+10.9%)約24%
営業利益1兆7,100億円4,251億円(+4.9%)約25%
純利益9,800億円2,748億円(+5.8%)約28%

純利益は、通期予想に対して約28%と、目安の25%を上回るペースだ。予想は変えていない。次の第2四半期(中間期)の決算発表は2026年11月4日の予定だ。

7. 配当の持続性 ― ここがいちばん大事

配当方針原則として累進配当(減配せず、維持か増配)。2026年2月の開示では、純資産に対する配当の割合(DOE)も目安にするとしている
配当の推移2024年3月期 5.1円 → 2025年3月期 5.2円 → 2026年3月期 5.3円 → 今期予想 5.4円(中間2.7円・期末2.7円)。2012年3月期から15期連続の増配で、今期で16期連続の予想(2023年7月に1株を25株に分割。分割を調整した値)
配当性向2025年3月期 43.5% → 2026年3月期 42%。今期は予想の1株利益12.04円に対して約45%
現金で払えているか2026年3月期のフリーキャッシュフロー約4,618億円に対し、配当の支払いは1株5.3円で約4,400億円の規模。ほぼ同じ額で、余裕は小さい。今期の第1四半期は、データセンターへの投資が大きく、フリーキャッシュフローはマイナスだった
財務の余力自己資本比率 20.8%(2026年3月期末。前の期は34%)。現金及び現金同等物 約2.39兆円・有利子負債 約17.4兆円・利益剰余金 約9.0兆円(いずれも2026年6月末)
ベアベア
本業で残る現金と配当がほぼ同じで、第1四半期はマイナス。足りないぶんは借金ってこと……?
株人株人
そういう面はある。今はデータセンターへの投資が重い時期で、会社も今期まではフリーキャッシュフローが苦しいと見ている。これが何年も続けば、財務は少しずつ弱っていく。そこは正直に認めておく。
ブルブル
でも手元には2.4兆円の現金があるし、配当性向は45%で無理してない。累進配当を約束してるんだから、減らすのは最後の手段だぜ!
株人株人
そうだ。だから「減る」心配はしていない。NTTの配当は毎年0.1円ずつ増えてきたが、気にしているのは、この小さな増配すら止まらないかだ。

株人の判断:ホールドで安心か

〇 ホールドで大丈夫(継続)
  1. 累進配当を約束している。原則として減配しない方針で、15期連続の増配。今期も5.4円への増配予想
  2. 配当性向は約45%と無理がない。純利益は1兆円前後あり、第1四半期も通期予想の約28%と計画を上回るペース
  3. 手元の現金が厚い。約2.39兆円の現金と約9兆円の利益剰余金があり、フリーキャッシュフローが一時的に足りなくても配当は払える

正直に書いておくと、今月のNTTは気になる材料が多い。ドコモの情報の扱いのミス、格付けの引き下げ、17兆円を超える借入、そして配当とほぼ同じ額しかないフリーキャッシュフロー。配当の安全性はまだ保たれているので持ち続けるが、「◎」ではなく「〇」にした。テルモ(△)に近い位置にいると考えている。中間決算でフリーキャッシュフローの赤字が膨らんでいたり、ドコモの解約が増えていたりしたら「△」に下げる。

次の点検で見ること
  • 2026年11月4日の中間決算:純利益が通期9,800億円の半分前後まで来たか。年5.4円の配当予想が変わらないか
  • フリーキャッシュフローの赤字の大きさと、有利子負債がさらに増えていないか
  • ドコモの契約数・解約の動き(情報の扱いの問題の影響)

よくある質問

NTTは減配の心配はありますか?
2026年10月時点では、減配の材料は見当たりません。原則として減配しない累進配当を掲げ、今期は年5.4円(前期5.3円)の増配予想です。ただし有利子負債が大きく、フリーキャッシュフローは配当とほぼ同じ額で余裕は小さいため、増配のペースが鈍る可能性はあります。将来を約束するものではありません。
NTTの配当はいつ、いくらもらえますか?
今期(2027年3月期)の予想は年5.4円(中間2.7円・期末2.7円)です。権利確定は9月末(中間)と3月末(期末)です。
ドコモの情報の無断提供は、配当に影響しますか?
この件で直接出る費用は、純利益が1兆円規模のNTTにとって大きくなく、配当を減らす理由にはなりにくいと見ています。気にしているのは、信頼の低下でドコモの解約が増え、稼ぎがじわじわ減ることです。決算で契約数の動きを確かめます。
ベアベア
配当は守られそうだけど、心配な話が多い月だったね。11月の決算、しっかり見ようね。
株人株人
そういうことだ。今月のNTTは〇 ホールドで大丈夫。ただし財務と現金の流れは、来月も目を離さない。

出典

  • NTT「2027年3月期 第1四半期決算短信」・決算説明資料(2026-08-06)
  • NTT「2026年3月期 決算短信」・株主還元方針・自己株式取得の決定(2026-05-08)・自己株式の取得状況(2026-09-01、2026-10-01)
  • NTTドコモ 顧客情報の第三者提供に関する発表(2026-09-16)/共同通信「個人情報34万人分を無断提供 ドコモ、アマゾンに」(熊本日日新聞 https://kumanichi.com/articles/2036371)
  • S&P Global Ratings「NTT Downgraded To 'BBB+' On Delayed Financial Recovery; Outlook Stable」(2026)
  • IRBANK「NTT(9432)の業績」 https://irbank.net/9432/results ・「配当」 https://irbank.net/9432/dividend

この記事は点検日(2026年10月12日)時点の情報です。数値は会社の開示資料にもとづきます。

この点検について
毎月1回、配当目的で持っている銘柄に「配当を脅かすニュース」が出ていないかを確かめています。見るのは株価ではなく、配当が続くか・増えるか・減るか。
◎ 安心 配当は守られ、増配も見込める
〇 大丈夫 配当は守れる見込み。気になる点を次の決算で見る
△ 様子見 配当が減るおそれ。買い増しはせず、代わりも探す
× 見直し 減配が決まった・ほぼ確実。売りも考える
免責:当ページは運営者「株人(かぶと)」が保有銘柄を点検した記録であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。 点検日時点の情報にもとづきます。投資判断はご自身の責任で行ってください。