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株人- 10月8日に主要取引先との供給契約の解除を発表。約975億円の損失で、今期の純利益予想は1,931億円→1,200億円に下がった
- それでも配当予想は年36円のまま(前期30円から+6円)。損失の約4分の3は現金が出ていかない減損で、本業の調整後の営業利益の予想は据え置き
- 注意にした理由は2つ。今月に大きな悪材料が出たこと、そして買収で積み上がった「のれん」などが大きく、同じような損失がまた出る余地があること
ここからは、点検した7つの項目を順番に書いていく。全部「配当が続くか・増えるか・減るか」の目線だ。
1. 今の会社の状況 ― 配当の原資は稼げているか
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆361億円 | 1兆1,318億円(+9.2%) |
| 営業利益 | 1,577億円 | 1,763億円(+11.8%) |
| 純利益(親会社帰属) | 1,170億円 | 1,359億円 |
| 営業キャッシュフロー | 2,108億円 | 2,309億円 |
前期まで、テルモの稼ぎはとても強かった。今期の第1四半期も、売上の約6割を占める心臓血管カンパニーの売上が+19.2%、利益率は31.9%と、柱の事業は好調だ。
ブル2. 直近1か月のニュース ― 配当に響く悪材料は?
今月は大きな悪材料が1つあった。10月8日、テルモは米国の血漿(けっしょう)を集める会社 CSL Plasma との、血漿を集める機器の供給契約を、合意のうえで解除すると発表した。2021年から協業し、米国コロラド州に専用の消耗品の工場まで建てていたが、相手が一部の拠点で他社の機器に切り替える意向を示したためだ。
| 損失の中身(会社の発表) | 金額(概算) | 現金が出ていくか |
|---|---|---|
| 減損(米国の工場の設備・無形資産など) | 約4.5億ドル(約720億円) | 出ていかない(帳簿の上の損失) |
| 関連費用(移行期間の事業の損失・再編の費用など) | 約1.6億ドル(約255億円) | 出ていく |
| 合計 | 約6.1億ドル(約975億円) |
一方で9月30日には、脳の血管の治療技術をもつ米国の Arsenal Medical の買収で合意したと発表している。
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株人3. 金利の影響 ― 小さい
前期末の有利子負債は約3,798億円あったが、現金及び現金同等物も約2,805億円あり、今期の6月末には約3,146億円まで増えている。日銀の利上げで利息は増えても、配当の原資が大きく削られることはない。米国の金利が下がれば、米国での買収の資金を借りやすくなる。
4. 為替の影響 ― 円高は利益を押し下げる
売上の約7割を海外で稼ぐ。今期の前提は1ドル155円・1ユーロ180円だ。円高になれば、海外の利益を円に直したときに目減りする。会社の前提より大きく円高に振れれば、会計上の利益が下がり、配当性向が上がる。
ただ、現地で稼いだドルやユーロそのものが消えるわけではない。為替だけで配当が減ることは考えにくいが、増配のペースを鈍らせる要因にはなる。
5. 地政学の影響 ― 米国への依存
今回の契約解除は、米国の大口の取引先に頼るリスクが表に出た例だ。米国では、医療の物資を国内で作らせる動きや関税もある。第1四半期には、過去に払った米国の関税の還付金130億円が利益を押し上げた一方で、新たに払った関税47億円が原価を押し上げた。通商政策で利益が揺れる構造になっている。
医療機器は命に関わる物資なので、露骨な輸入禁止の標的にはなりにくい。それでも、米国で現地生産を求められて設備投資が増えれば、配当に回せる現金は減りうる。
6. 決算見通し ― 純利益の予想は下がったが、本業の予想は据え置き
| 今期(2027年3月期)の会社予想 | 修正前 | 修正後(10/8) | 前期の実績 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1兆2,390億円 | 1兆2,295億円 | 1兆1,318億円 |
| 調整後営業利益 | 2,745億円 | 2,745億円(据え置き) | — |
| 営業利益 | 2,575億円 | 1,600億円 | 1,763億円 |
| 純利益(親会社帰属) | 1,931億円 | 1,200億円 | 1,359億円 |
| 1株利益 | 130.91円 | 81.35円 | 92.14円 |
本業の稼ぐ力を示す調整後の営業利益は、1円も下げていない。会社の説明では、減損で設備の帳簿の価値がなくなる分、これからの減価償却費が約20億円減り、Arsenal Medical の研究開発費の増加(約20億円)と打ち消し合う。
次の第2四半期(中間期)の決算発表は2026年11月12日、次の5か年の成長戦略「GS31」の発表は12月15日の予定だ。
7. 配当の持続性 ― ここがいちばん大事
| 配当方針 | 中期経営計画「GS26」で、配当と自社株買いを合わせた総還元性向50%を目標に、安定増配の継続を基本方針とする |
|---|---|
| 配当の推移 | 2025年3月期 26円 → 2026年3月期 30円 → 今期予想 36円(10/8 の修正後も据え置き)。16期連続の増配で、今期で17期 |
| 配当性向 | 2026年3月期 32.6%。今期は修正後の1株利益81.35円に対して約44%(修正前なら約27%) |
| 現金で払えているか | 前期の営業キャッシュフロー2,309億円。配当の支払い(1株36円で年約530億円の概算)は、その4分の1以下。前期は買収などで投資キャッシュフローが−3,441億円と大きく、差し引きはマイナスだった |
| 財務の余力 | 自己資本比率 68.5%(2026年3月期末。前々期は74.8%)。現金及び現金同等物 約3,146億円(2026年6月末) |
| 注意点 | 買収で積み上がったのれんと無形資産が前期末で約8,034億円あり、資本の約半分にあたる |
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株人株人の判断:ホールドで安心か
- 配当予想は据え置きで、増配のまま。大きな損失のあとも年36円(前期30円)を維持した。配当性向は約44%で、総還元性向50%の目標の内側
- 損失の大半は現金が出ていかない。975億円のうち約720億円は減損。本業の調整後の営業利益の予想は据え置き、柱の心臓血管事業は好調
- ただし今月、大きな悪材料が出た。米国の大口取引先を失い、のれんと無形資産は約8,034億円と大きい。同じような損失がまた出ないかを見る必要がある
正直に書いておくと、配当が「減る」材料は今のところない。それでも、今月は事業の大きな失敗が表に出た月で、次の決算と12月の新しい中期計画を見るまでは「注意」にしておく。テルモは配当利回り約1.6%の成長枠の銘柄で、配当の伸びに期待して持っている。その伸びが鈍らないかも合わせて見る。
- 2026年11月12日の第2四半期決算:年36円の配当予想が変わらないか、契約解除の費用(現金が出る約255億円)が膨らんでいないか、心臓血管事業の伸びが続いているか
- 2026年12月15日の次の5か年の成長戦略「GS31」:配当と株主還元の方針(総還元性向50%の目標が続くか)
よくある質問
- テルモは減配の心配はありますか?
- 2026年10月時点では、すぐに減配する材料はないと見ています。10月8日に約975億円の損失を発表したあとも、年36円の配当予想(前期30円)を据え置きました。ただし買収によるのれんなどが大きく、同じような損失が続けば判断が変わりうるため、「注意しながらホールド」にしています。将来を約束するものではありません。
- テルモの配当はいつ、いくらもらえますか?
- 今期(2027年3月期)の予想は年36円です。権利確定は9月末(中間)と3月末(期末)です。
- CSL Plasma との契約解除は配当に影響しますか?
- 今期の純利益予想は1,931億円から1,200億円に下がりましたが、損失の約4分の3は現金が出ていかない減損で、会社は配当予想を変えていません。本業の調整後の営業利益の予想も据え置きです。影響は、増配のペースが鈍るかどうかに出ると見ています。
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株人出典
- テルモ「主要取引先との供給契約の解除に伴う損失等の計上、および2027年3月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026-10-08)
- テルモ「Arsenal Medical 社の買収に関するお知らせ」(2026-09-30)
- テルモ「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」・「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026-08-07)
- テルモ 中期経営計画「GS26」・株主還元方針 https://www.terumo.co.jp/investors
- IRBANK「テルモ(4543)の業績」 https://irbank.net/4543/results
この記事は点検日(2026年10月11日)時点の情報です。数値は会社の開示資料にもとづきます。