保有銘柄の月次点検(配当目線)

【2026年10月点検】テルモ(4543)はホールドで大丈夫?配当目線で契約解除の損失・配当・決算をチェック

点検日 2026/10/11(日)   株人(かぶと)
追記(2026年10月12日):この点検を受けて、テルモは高配当つみたて50銘柄から外し、同じ精密機器のシチズン時計(7762)に入れ替えることにしました。理由と選び方は50銘柄を選んだ理由(8章)に書いています。下の点検内容は10月11日時点のものです。
株人株人
今月の点検、今日はテルモだ。心臓のカテーテル、病院で使う点滴や注射器、輸血・血液の機器を世界で売る医療機器の大手だ。私の高配当つみたて50銘柄のひとつだ。見るのはいつもどおり「この配当、これからも続くのか」だけだ。
ベアベア
株人さん、大変! 10月8日にアメリカの大きな取引先との契約を解除して、約975億円の損失を出すって発表したの。今期の純利益の予想も38%下がったよ……。
ブルブル
でも配当予想は36円のままで、30円から増配のままだぜ! 本業の調整後の営業利益の予想も1円も下げてない。
ベアベア
でも、買った会社や工場の価値が大きく下がるのは、これで終わりなのかな……?
株人株人
今月は、いつもより慎重に見る。損失の中身、本業への影響、配当の余力。どれも「配当に響くかどうか」に引き直して順番に見ていこう。結論は先に書いておく。
判定:注意しながらホールド 2026年10月の点検
  • 10月8日に主要取引先との供給契約の解除を発表。約975億円の損失で、今期の純利益予想は1,931億円→1,200億円に下がった
  • それでも配当予想は年36円のまま(前期30円から+6円)。損失の約4分の3は現金が出ていかない減損で、本業の調整後の営業利益の予想は据え置き
  • 注意にした理由は2つ。今月に大きな悪材料が出たこと、そして買収で積み上がった「のれん」などが大きく、同じような損失がまた出る余地があること
この銘柄は現在保有していません。

ここからは、点検した7つの項目を順番に書いていく。全部「配当が続くか・増えるか・減るか」の目線だ。

1. 今の会社の状況 ― 配当の原資は稼げているか

項目2025年3月期2026年3月期
売上収益1兆361億円1兆1,318億円(+9.2%)
営業利益1,577億円1,763億円(+11.8%)
純利益(親会社帰属)1,170億円1,359億円
営業キャッシュフロー2,108億円2,309億円

前期まで、テルモの稼ぎはとても強かった。今期の第1四半期も、売上の約6割を占める心臓血管カンパニーの売上が+19.2%、利益率は31.9%と、柱の事業は好調だ。

ブルブル
いちばん稼いでる心臓の事業は、まったく傷ついてないってことだな!

2. 直近1か月のニュース ― 配当に響く悪材料は?

今月は大きな悪材料が1つあった。10月8日、テルモは米国の血漿(けっしょう)を集める会社 CSL Plasma との、血漿を集める機器の供給契約を、合意のうえで解除すると発表した。2021年から協業し、米国コロラド州に専用の消耗品の工場まで建てていたが、相手が一部の拠点で他社の機器に切り替える意向を示したためだ。

損失の中身(会社の発表)金額(概算)現金が出ていくか
減損(米国の工場の設備・無形資産など)約4.5億ドル(約720億円)出ていかない(帳簿の上の損失)
関連費用(移行期間の事業の損失・再編の費用など)約1.6億ドル(約255億円)出ていく
合計約6.1億ドル(約975億円)

一方で9月30日には、脳の血管の治療技術をもつ米国の Arsenal Medical の買収で合意したと発表している。

ベアベア
工場まで建てたのに、取引先が他社に乗りかえちゃったんだね……。
株人株人
事業としては痛い失敗だ。ただ配当の目線で見ると、975億円のうち720億円は現金が出ていかない損失で、実際に出ていくのは約255億円だ。本業で年2,300億円の現金が入る会社なので、配当の支払いが止まる規模ではない。

3. 金利の影響 ― 小さい

前期末の有利子負債は約3,798億円あったが、現金及び現金同等物も約2,805億円あり、今期の6月末には約3,146億円まで増えている。日銀の利上げで利息は増えても、配当の原資が大きく削られることはない。米国の金利が下がれば、米国での買収の資金を借りやすくなる。

4. 為替の影響 ― 円高は利益を押し下げる

売上の約7割を海外で稼ぐ。今期の前提は1ドル155円・1ユーロ180円だ。円高になれば、海外の利益を円に直したときに目減りする。会社の前提より大きく円高に振れれば、会計上の利益が下がり、配当性向が上がる。

ただ、現地で稼いだドルやユーロそのものが消えるわけではない。為替だけで配当が減ることは考えにくいが、増配のペースを鈍らせる要因にはなる。

5. 地政学の影響 ― 米国への依存

今回の契約解除は、米国の大口の取引先に頼るリスクが表に出た例だ。米国では、医療の物資を国内で作らせる動きや関税もある。第1四半期には、過去に払った米国の関税の還付金130億円が利益を押し上げた一方で、新たに払った関税47億円が原価を押し上げた。通商政策で利益が揺れる構造になっている。

医療機器は命に関わる物資なので、露骨な輸入禁止の標的にはなりにくい。それでも、米国で現地生産を求められて設備投資が増えれば、配当に回せる現金は減りうる。

6. 決算見通し ― 純利益の予想は下がったが、本業の予想は据え置き

今期(2027年3月期)の会社予想修正前修正後(10/8)前期の実績
売上収益1兆2,390億円1兆2,295億円1兆1,318億円
調整後営業利益2,745億円2,745億円(据え置き)—
営業利益2,575億円1,600億円1,763億円
純利益(親会社帰属)1,931億円1,200億円1,359億円
1株利益130.91円81.35円92.14円

本業の稼ぐ力を示す調整後の営業利益は、1円も下げていない。会社の説明では、減損で設備の帳簿の価値がなくなる分、これからの減価償却費が約20億円減り、Arsenal Medical の研究開発費の増加(約20億円)と打ち消し合う。

次の第2四半期(中間期)の決算発表は2026年11月12日、次の5か年の成長戦略「GS31」の発表は12月15日の予定だ。

7. 配当の持続性 ― ここがいちばん大事

配当方針中期経営計画「GS26」で、配当と自社株買いを合わせた総還元性向50%を目標に、安定増配の継続を基本方針とする
配当の推移2025年3月期 26円 → 2026年3月期 30円 → 今期予想 36円(10/8 の修正後も据え置き)。16期連続の増配で、今期で17期
配当性向2026年3月期 32.6%。今期は修正後の1株利益81.35円に対して約44%(修正前なら約27%)
現金で払えているか前期の営業キャッシュフロー2,309億円。配当の支払い(1株36円で年約530億円の概算)は、その4分の1以下。前期は買収などで投資キャッシュフローが−3,441億円と大きく、差し引きはマイナスだった
財務の余力自己資本比率 68.5%(2026年3月期末。前々期は74.8%)。現金及び現金同等物 約3,146億円(2026年6月末)
注意点買収で積み上がったのれんと無形資産が前期末で約8,034億円あり、資本の約半分にあたる
ブルブル
純利益が4割近く減っても、配当性向は44%で50%の内側。だから増配のままでいけたんだな!
株人株人
そうだ。ふだんから配当性向を30%前後に抑えていた余力が、今回の損失を受け止めた。現金も厚い。ここまでは心強い。
ベアベア
でも、のれんが8,000億円もあるなら、また同じような損失が出たら……?
株人株人
そこが「注意」にした理由だ。大きな減損が何度も続けば、会計上の利益が赤字になり、現金があっても配当を据え置いたり減らしたりする判断になりうる。12月のGS31で、還元の方針がどう語られるかを必ず見る。

株人の判断:ホールドで安心か

注意しながらホールド(継続)
  1. 配当予想は据え置きで、増配のまま。大きな損失のあとも年36円(前期30円)を維持した。配当性向は約44%で、総還元性向50%の目標の内側
  2. 損失の大半は現金が出ていかない。975億円のうち約720億円は減損。本業の調整後の営業利益の予想は据え置き、柱の心臓血管事業は好調
  3. ただし今月、大きな悪材料が出た。米国の大口取引先を失い、のれんと無形資産は約8,034億円と大きい。同じような損失がまた出ないかを見る必要がある

正直に書いておくと、配当が「減る」材料は今のところない。それでも、今月は事業の大きな失敗が表に出た月で、次の決算と12月の新しい中期計画を見るまでは「注意」にしておく。テルモは配当利回り約1.6%の成長枠の銘柄で、配当の伸びに期待して持っている。その伸びが鈍らないかも合わせて見る。

次の点検で見ること
  • 2026年11月12日の第2四半期決算:年36円の配当予想が変わらないか、契約解除の費用(現金が出る約255億円)が膨らんでいないか、心臓血管事業の伸びが続いているか
  • 2026年12月15日の次の5か年の成長戦略「GS31」:配当と株主還元の方針(総還元性向50%の目標が続くか)

よくある質問

テルモは減配の心配はありますか?
2026年10月時点では、すぐに減配する材料はないと見ています。10月8日に約975億円の損失を発表したあとも、年36円の配当予想(前期30円)を据え置きました。ただし買収によるのれんなどが大きく、同じような損失が続けば判断が変わりうるため、「注意しながらホールド」にしています。将来を約束するものではありません。
テルモの配当はいつ、いくらもらえますか?
今期(2027年3月期)の予想は年36円です。権利確定は9月末(中間)と3月末(期末)です。
CSL Plasma との契約解除は配当に影響しますか?
今期の純利益予想は1,931億円から1,200億円に下がりましたが、損失の約4分の3は現金が出ていかない減損で、会社は配当予想を変えていません。本業の調整後の営業利益の予想も据え置きです。影響は、増配のペースが鈍るかどうかに出ると見ています。
ベアベア
配当は守ってくれたけど、今月はちょっとドキッとしたよ。12月の新しい計画、ちゃんと見ようね。
株人株人
そういうことだ。今月のテルモは注意しながらホールド。配当が続く限り持ち続けるが、次の決算とGS31を見て、もう一度点検する。

出典

  • テルモ「主要取引先との供給契約の解除に伴う損失等の計上、および2027年3月期通期連結業績予想の修正に関するお知らせ」(2026-10-08)
  • テルモ「Arsenal Medical 社の買収に関するお知らせ」(2026-09-30)
  • テルモ「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」・「2027年3月期 第1四半期決算短信」(2026-08-07)
  • テルモ 中期経営計画「GS26」・株主還元方針 https://www.terumo.co.jp/investors
  • IRBANK「テルモ(4543)の業績」 https://irbank.net/4543/results

この記事は点検日(2026年10月11日)時点の情報です。数値は会社の開示資料にもとづきます。

この点検について
毎月1回、配当目的で持っている銘柄に「配当を脅かすニュース」が出ていないかを確かめています。見るのは株価ではなく、配当が続くか・増えるか・減るか。
安心 配当は守られている
注意 気になる材料あり。次の決算を見る
要再考 減配のおそれ。保有を見直す
免責:当ページは運営者「株人(かぶと)」が保有銘柄を点検した記録であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。 点検日時点の情報にもとづきます。投資判断はご自身の責任で行ってください。