株人
ブル
ベア
ブル
株人- 今期の配当予想は年170円(普通配当140円+特別配当30円)。普通配当は100円→125円→140円と増え続けている
- 第1四半期の純利益は3,286億円(+33.4%)で、通期予想4,250億円の約77%。台風シーズンの前に大きな余裕を作った
- 気になるのは、特別配当が45円→35円→30円と小さくなっていること。特別配当がなくなる年にも、普通配当の伸びで170円を保てるかを見ていく
ここからは、点検した7つの項目を順番に書いていく。全部「配当が続くか・増えるか・減るか」の目線だ。
1. 今の会社の状況 ― 配当の原資は稼げているか
事業の柱は3つある。国内の損害保険(三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保)、国内の生命保険、そして英国の MS Amlin などの海外の保険だ。2026年3月期の海外の保険子会社は、正味収入保険料1兆7,351億円、純利益2,618億円と、利益の大きな柱になっている。
| 項目 | 2026年3月期(実績・IFRS) | 2027年3月期(会社予想) |
|---|---|---|
| 保険収益など | 6兆4,360億円 | — |
| 純利益 | 5,106億円 | 4,250億円(−16.8%) |
| 1株利益 | 342.99円 | 299.40円 |
大事な変化がある。MS&ADは2026年3月期から会計の基準を国際基準(IFRS)に変えた。以前の日本の基準では、長く持っていた取引先の株(政策保有株)を売った利益が純利益を押し上げていたが、IFRSではこの売却益が純利益に入らない。だから、前の年までの利益とそのまま比べられない。
もう一つ、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保を2027年4月をめどに合併させる計画が進んでいる。人件費や代理店の手数料などの削減で、本業の利益を厚くするねらいだ。
ブル2. 直近の動き ― 配当に響く悪材料は?
9月中旬から10月12日までの1か月には、業績の下方修正や減配の示唆といった目立った悪材料はなかった。
過去の問題も書いておく。企業向けの保険で保険料を他社とすり合わせていた問題や、代理店を通じた情報漏えいで、2023年12月と2025年3月に金融庁から業務改善命令を受けた。2026年6月には改善計画の進み具合を報告し、内部監査の人員を大きく増やしている。費用はすでに業績に反映されていて、今の利益の規模から見て配当を脅かすものではない。
好材料としては、10月2日に自社株買いの途中経過を開示した。株数が減れば、1株あたりの配当を増やしやすくなる。9月29日には劣後債の期限前の償還も発表している。
3. 金利の影響 ― 国内の利上げは追い風
保険会社は、集めた保険料を債券などで運用して利益を得る。日銀の利上げで国内の金利が上がれば、新しく買う債券の利回りが上がり、運用の利益が増える。長い期間お金を預かる生命保険や積立型の保険では、とくに効く。
保険会社の健全性を測る新しい物差しであるESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)は、2026年3月末で214%と、規制の求める100%を大きく上回る。金利の上昇はこの比率をさらに押し上げる方向に働くので、株主への還元の余力も広がる。一方、米国の利下げは外国の債券の利回りを下げるが、国内の金利上昇の恩恵のほうが大きいと見ている。
4. 為替の影響 ― 円高は海外の利益を目減りさせる
海外の保険の比重が大きいので、円安は利益を押し上げ、円高は押し下げる。今期の前提は1ドル150円だ。ただ、MS&ADは配当を決めるとき、為替や株価の変動の影響を除いた「グループ修正利益」を物差しにしている。為替で1年の利益が上下しても、それだけで配当の方針が変わることはない。
5. 地政学・自然災害の影響 ― 物価高と大災害
中東情勢などで物価が上がると、車の修理代や建築資材が高くなり、支払う保険金が増える。損保はこの増加分を保険料の値上げで取り戻すことになり、自動車保険や火災保険の保険料の引き上げを進めている。
いちばん大きなリスクは、国内外の大きな自然災害だ。台風や北米のハリケーンが続けば、その年の利益は大きく減る。会社は例年並みの災害を最初から予想に織り込み、再保険(保険会社がかける保険)でリスクを分散している。
6. 決算見通し ― 第1四半期で通期の約77%
| 項目 | 今期(2027年3月期)の会社予想 | 第1四半期の実績(4〜6月) |
|---|---|---|
| 保険収益など | — | 1兆6,862億円(+14.1%) |
| 純利益 | 4,250億円(据え置き) | 3,286億円(+33.4%) |
第1四半期だけで通期予想の約77%を稼いだ。損保は台風が集中する7〜9月以降に保険金の支払いが増えるので、その前に大きな余裕を作れたのは心強い。会社は予想を据え置いているが、下半期に大災害が続かなければ、予想を上回る可能性が高い。次の第2四半期(中間期)の決算発表は2026年11月19日の予定だ。
ベア
株人7. 配当の持続性 ― ここがいちばん大事
| 配当方針 | グループ修正利益の50%を基本に、配当と自社株買いで株主に返す。「累進配当」という言葉は使っていないが、2014年3月期から減配していない |
|---|---|
| 配当の推移 | 2025年3月期 145円(普通100円+特別45円)→ 2026年3月期 160円(普通125円+特別35円)→ 今期予想 170円(普通140円+特別30円。中間85円・期末85円)。13期連続の増配(2024年4月に1株を3株に分割。分割を調整した値) |
| 配当性向 | 2026年3月期 46.6%。今期は予想の1株利益299.40円に対して約57% |
| 現金で払えているか | 2026年3月期の営業キャッシュフロー約9,540億円に対し、配当の支払いは約2,249億円。本業の現金で十分に払えている |
| 政策保有株 | 2030年3月末までに政策保有株をゼロにする方針。売却で得たお金を自社株買いに回しており、株数が減るほど1株あたりの配当を増やしやすくなる |
| 財務の余力 | 自己資本比率 21.7%(2026年3月期末。保険会社としては厚い水準)。ESR 214% |
ベア
株人
ブル
株人株人の判断:ホールドで安心か
- 今期の利益の余裕が大きい。第1四半期で通期予想の約77%を稼ぎ、災害の多い下半期の前にクッションを作った
- 普通配当が伸びている。100円→125円→140円と増え、特別配当の減少を上回って合計170円に。13期連続の増配
- 還元の材料が続く。2030年3月末までの政策保有株ゼロの方針で、売却したお金を自社株買いに回す流れが続く。本業の現金は配当の約4倍
正直に書いておくと、今期の配当170円には特別配当30円が入っていて、今期の純利益の予想は前期より約17%少ない。損保なので、大きな災害が続く年は利益が大きく減る。それでも、普通配当が伸び続けていることと、第1四半期の大きな余裕から「安心」にした。特別配当がなくなる年に合計が下がるようなら、判定を見直す。
- 2026年11月19日の第2四半期決算:7〜9月の自然災害による保険金がどのくらい出たか。純利益4,250億円の予想が上方修正されるか
- 年170円の配当予想と、普通配当・特別配当の内訳
- 政策保有株の売却と自社株買いの進み具合、2027年4月の国内2社の合併の準備
よくある質問
- MS&ADは減配の心配はありますか?
- 2026年10月時点では、減配の材料は見当たりません。今期は年170円(前期160円)の予想で、第1四半期で通期の利益予想の約77%を稼いでいます。ただし170円には特別配当30円が含まれており、特別配当は年々小さくなっています。将来を約束するものではありません。
- MS&ADの配当はいつ、いくらもらえますか?
- 今期(2027年3月期)の予想は年170円(中間85円・期末85円)で、うち普通配当が140円、特別配当が30円です。権利確定は9月末(中間)と3月末(期末)です。
- 普通配当と特別配当は何が違いますか?
- 普通配当は毎年続けることを前提にした配当で、特別配当はその年の事情で上乗せする配当です。MS&ADは普通配当を100円→125円→140円と増やす一方、特別配当は45円→35円→30円と小さくなっています。合計の配当を見るときは、普通配当の伸びが特別配当の減りを上回っているかが大事です。
ベア
株人出典
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕」(2026-08-14)
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」・決算説明資料・株主還元方針(2026-05-20)
- MS&ADインシュアランスグループホールディングス IRニュース(2026-09-29 劣後債の期限前償還、2026-10-02 自己株式の取得状況)
- IRBANK「MS&AD(8725)の業績」 https://irbank.net/8725/results ・「配当」 https://irbank.net/8725/dividend
この記事は点検日(2026年10月12日)時点の情報です。数値は会社の開示資料にもとづきます。