保有銘柄の月次点検(配当目線)

【2026年10月点検】MS&AD(8725)はホールドで大丈夫?配当目線で特別配当・自然災害・政策保有株をチェック

点検日 2026/10/12(月)   保険業   株人(かぶと)
株人株人
今月の点検、今日はMS&ADインシュアランスグループだ。三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保を中心とする、3メガ損保のひとつだ。私の高配当つみたて50銘柄のひとつだ。見るのはいつもどおり「この配当、これからも続くのか」だけだ。
ブルブル
株人さん、4〜6月の3か月だけで、通期の利益予想の77%を稼いだぜ! 配当も160円から170円に増やす予想だ!
ベアベア
でも、その170円のうち30円は特別配当なんでしょ? 特別配当って、いつかなくなっちゃうものだよね。それに今期の利益の予想は前の期より減るって……。
ブルブル
ふつうの配当だけ見ても、100円→125円→140円って毎年増えてるんだぜ。
株人株人
いい指摘だ。今月は「ふつうの配当」と「特別配当」を分けて見る。それから、会計のルールが変わって見え方が変わった利益の中身もだ。順番に見ていこう。結論は先に書いておく。
判定:◎ 安心してホールド 2026年10月の点検
  • 今期の配当予想は年170円(普通配当140円+特別配当30円)。普通配当は100円→125円→140円と増え続けている
  • 第1四半期の純利益は3,286億円(+33.4%)で、通期予想4,250億円の約77%。台風シーズンの前に大きな余裕を作った
  • 気になるのは、特別配当が45円→35円→30円と小さくなっていること。特別配当がなくなる年にも、普通配当の伸びで170円を保てるかを見ていく
保有株数
2.0217株
取得単価
5,035円
年間配当(予想)
344円
取得単価に対する利回り
3.38%
参考:評価額 10,523円・含み損益 +344円(判定には使っていません)。保有データは /dividend と同じで、毎営業日自動で更新されます。

ここからは、点検した7つの項目を順番に書いていく。全部「配当が続くか・増えるか・減るか」の目線だ。

1. 今の会社の状況 ― 配当の原資は稼げているか

事業の柱は3つある。国内の損害保険(三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保)、国内の生命保険、そして英国の MS Amlin などの海外の保険だ。2026年3月期の海外の保険子会社は、正味収入保険料1兆7,351億円、純利益2,618億円と、利益の大きな柱になっている。

項目2026年3月期(実績・IFRS)2027年3月期(会社予想)
保険収益など6兆4,360億円—
純利益5,106億円4,250億円(−16.8%)
1株利益342.99円299.40円

大事な変化がある。MS&ADは2026年3月期から会計の基準を国際基準(IFRS)に変えた。以前の日本の基準では、長く持っていた取引先の株(政策保有株)を売った利益が純利益を押し上げていたが、IFRSではこの売却益が純利益に入らない。だから、前の年までの利益とそのまま比べられない。

もう一つ、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保を2027年4月をめどに合併させる計画が進んでいる。人件費や代理店の手数料などの削減で、本業の利益を厚くするねらいだ。

ブルブル
株を売ったもうけが入らなくなったぶん、今の数字は本業の稼ぎに近いってことだな!

2. 直近の動き ― 配当に響く悪材料は?

9月中旬から10月12日までの1か月には、業績の下方修正や減配の示唆といった目立った悪材料はなかった。

過去の問題も書いておく。企業向けの保険で保険料を他社とすり合わせていた問題や、代理店を通じた情報漏えいで、2023年12月と2025年3月に金融庁から業務改善命令を受けた。2026年6月には改善計画の進み具合を報告し、内部監査の人員を大きく増やしている。費用はすでに業績に反映されていて、今の利益の規模から見て配当を脅かすものではない。

好材料としては、10月2日に自社株買いの途中経過を開示した。株数が減れば、1株あたりの配当を増やしやすくなる。9月29日には劣後債の期限前の償還も発表している。

3. 金利の影響 ― 国内の利上げは追い風

保険会社は、集めた保険料を債券などで運用して利益を得る。日銀の利上げで国内の金利が上がれば、新しく買う債券の利回りが上がり、運用の利益が増える。長い期間お金を預かる生命保険や積立型の保険では、とくに効く。

保険会社の健全性を測る新しい物差しであるESR(経済価値ベースのソルベンシー比率)は、2026年3月末で214%と、規制の求める100%を大きく上回る。金利の上昇はこの比率をさらに押し上げる方向に働くので、株主への還元の余力も広がる。一方、米国の利下げは外国の債券の利回りを下げるが、国内の金利上昇の恩恵のほうが大きいと見ている。

4. 為替の影響 ― 円高は海外の利益を目減りさせる

海外の保険の比重が大きいので、円安は利益を押し上げ、円高は押し下げる。今期の前提は1ドル150円だ。ただ、MS&ADは配当を決めるとき、為替や株価の変動の影響を除いた「グループ修正利益」を物差しにしている。為替で1年の利益が上下しても、それだけで配当の方針が変わることはない。

5. 地政学・自然災害の影響 ― 物価高と大災害

中東情勢などで物価が上がると、車の修理代や建築資材が高くなり、支払う保険金が増える。損保はこの増加分を保険料の値上げで取り戻すことになり、自動車保険や火災保険の保険料の引き上げを進めている。

いちばん大きなリスクは、国内外の大きな自然災害だ。台風や北米のハリケーンが続けば、その年の利益は大きく減る。会社は例年並みの災害を最初から予想に織り込み、再保険(保険会社がかける保険)でリスクを分散している。

6. 決算見通し ― 第1四半期で通期の約77%

項目今期(2027年3月期)の会社予想第1四半期の実績(4〜6月)
保険収益など—1兆6,862億円(+14.1%)
純利益4,250億円(据え置き)3,286億円(+33.4%)

第1四半期だけで通期予想の約77%を稼いだ。損保は台風が集中する7〜9月以降に保険金の支払いが増えるので、その前に大きな余裕を作れたのは心強い。会社は予想を据え置いているが、下半期に大災害が続かなければ、予想を上回る可能性が高い。次の第2四半期(中間期)の決算発表は2026年11月19日の予定だ。

ベアベア
でも、今年の夏から秋の台風は大丈夫だったのかな。損保は災害ひとつで利益が吹き飛ぶって聞くし……。
株人株人
そこは11月の中間決算で分かる。7〜9月の災害の保険金がどれくらい出たかを見る。ただ、第1四半期で通期の8割近くを稼いでいるので、かなりの災害があっても予想は守れる計算だ。

7. 配当の持続性 ― ここがいちばん大事

配当方針グループ修正利益の50%を基本に、配当と自社株買いで株主に返す。「累進配当」という言葉は使っていないが、2014年3月期から減配していない
配当の推移2025年3月期 145円(普通100円+特別45円)→ 2026年3月期 160円(普通125円+特別35円)→ 今期予想 170円(普通140円+特別30円。中間85円・期末85円)。13期連続の増配(2024年4月に1株を3株に分割。分割を調整した値)
配当性向2026年3月期 46.6%。今期は予想の1株利益299.40円に対して約57%
現金で払えているか2026年3月期の営業キャッシュフロー約9,540億円に対し、配当の支払いは約2,249億円。本業の現金で十分に払えている
政策保有株2030年3月末までに政策保有株をゼロにする方針。売却で得たお金を自社株買いに回しており、株数が減るほど1株あたりの配当を増やしやすくなる
財務の余力自己資本比率 21.7%(2026年3月期末。保険会社としては厚い水準)。ESR 214%
ベアベア
特別配当が45円、35円、30円って減ってきてるよ……。いつかゼロになったら、170円から下がっちゃうんじゃない?
株人株人
そこが今月いちばん見ておきたい点だ。特別配当が減るぶんを、普通配当の伸び(100円→125円→140円)が上回ってきたから、合計は増え続けている。この形が続くかどうかだ。
ブルブル
政策保有株を売ったお金で自社株買いを続ければ、株数が減って普通配当を増やしやすくなるぜ。2030年まではその流れが続くんだろ?
株人株人
そのとおりだ。本業の現金は配当の4倍あり、財務も厚い。だから今、配当が「減る」心配はしていない。ただ、特別配当の行方は毎年見ていく。

株人の判断:ホールドで安心か

◎ 安心してホールド(継続)
  1. 今期の利益の余裕が大きい。第1四半期で通期予想の約77%を稼ぎ、災害の多い下半期の前にクッションを作った
  2. 普通配当が伸びている。100円→125円→140円と増え、特別配当の減少を上回って合計170円に。13期連続の増配
  3. 還元の材料が続く。2030年3月末までの政策保有株ゼロの方針で、売却したお金を自社株買いに回す流れが続く。本業の現金は配当の約4倍

正直に書いておくと、今期の配当170円には特別配当30円が入っていて、今期の純利益の予想は前期より約17%少ない。損保なので、大きな災害が続く年は利益が大きく減る。それでも、普通配当が伸び続けていることと、第1四半期の大きな余裕から「安心」にした。特別配当がなくなる年に合計が下がるようなら、判定を見直す。

次の点検で見ること
  • 2026年11月19日の第2四半期決算:7〜9月の自然災害による保険金がどのくらい出たか。純利益4,250億円の予想が上方修正されるか
  • 年170円の配当予想と、普通配当・特別配当の内訳
  • 政策保有株の売却と自社株買いの進み具合、2027年4月の国内2社の合併の準備

よくある質問

MS&ADは減配の心配はありますか?
2026年10月時点では、減配の材料は見当たりません。今期は年170円(前期160円)の予想で、第1四半期で通期の利益予想の約77%を稼いでいます。ただし170円には特別配当30円が含まれており、特別配当は年々小さくなっています。将来を約束するものではありません。
MS&ADの配当はいつ、いくらもらえますか?
今期(2027年3月期)の予想は年170円(中間85円・期末85円)で、うち普通配当が140円、特別配当が30円です。権利確定は9月末(中間)と3月末(期末)です。
普通配当と特別配当は何が違いますか?
普通配当は毎年続けることを前提にした配当で、特別配当はその年の事情で上乗せする配当です。MS&ADは普通配当を100円→125円→140円と増やす一方、特別配当は45円→35円→30円と小さくなっています。合計の配当を見るときは、普通配当の伸びが特別配当の減りを上回っているかが大事です。
ベアベア
ふつうの配当と特別配当、分けて見るのが大事なんだね。11月は台風の影響も見ようね。
株人株人
そういうことだ。今月のMS&ADは◎ 安心してホールド。11月19日の中間決算で、災害の影響と配当の内訳をもう一度見る。

出典

  • MS&ADインシュアランスグループホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕」(2026-08-14)
  • MS&ADインシュアランスグループホールディングス「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕」・決算説明資料・株主還元方針(2026-05-20)
  • MS&ADインシュアランスグループホールディングス IRニュース(2026-09-29 劣後債の期限前償還、2026-10-02 自己株式の取得状況)
  • IRBANK「MS&AD(8725)の業績」 https://irbank.net/8725/results ・「配当」 https://irbank.net/8725/dividend

この記事は点検日(2026年10月12日)時点の情報です。数値は会社の開示資料にもとづきます。

この点検について
毎月1回、配当目的で持っている銘柄に「配当を脅かすニュース」が出ていないかを確かめています。見るのは株価ではなく、配当が続くか・増えるか・減るか。
◎ 安心 配当は守られ、増配も見込める
〇 大丈夫 配当は守れる見込み。気になる点を次の決算で見る
△ 様子見 配当が減るおそれ。買い増しはせず、代わりも探す
× 見直し 減配が決まった・ほぼ確実。売りも考える
免責:当ページは運営者「株人(かぶと)」が保有銘柄を点検した記録であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。 点検日時点の情報にもとづきます。投資判断はご自身の責任で行ってください。